オイスターブレスの考察なぜ縦に長いのか

正直に言うと「オイスターブレス」が好きではありませんでした。縦に長く、やや間延びしたようで好きではなかったのです。 嫌いまでは行かないが、精々が「造りが良いな」止まり。オイスターブレス以外にも縦長のブレスレットはありますけどね。 プレジデントブレスやジュビリーブレスのようなブレスレットも作っておいて、なんでだろう?とか思ってました。
先日デイトナを手に取ったとき、なんでこのデザインなんだろうなと思考を伸ばした結果、 オイスターブレスは部品点数を減らし、耐久性を上げるための最適解を目指した設計思想なんだなと考えを改めました。

HAMILTON より
一般的な縦横比のコマのブレスレットの方が、正直外観は好きです。 ただし、オイスターブレスのような縦長のコマのブレスレットと比較して、コマ数がやや多くなります。
一般に、コマ数が多く多連になるほど、よりしなやかに変形し、腕にフィットしやすい形状にはなりますが、 代りに部品点数は増えますし、造りがより細やかになり破損リスクが上がります。
1コマ2コマ程度で果たして耐久性がどれだけ変わるかは疑問ですけどね、拘られててもいいじゃないですか。

ROLEX より
多連ブレスの最たる例はロレックスで言うところのジュビリーブレスでしょう。ジュビリーブレスは実際に手に取って使い続けていますが 水平にも垂直にもコマ数が多く、縦横にしなやかにフィットします。他方でやはりオイスターブレスの方が明らかに耐久性の面で安心感はありますし、 あとは「間に何かが入り込んで干渉しやすい」という側面はどうしてもあります。
オイスターブレスは限界まで縦に伸ばし、フィット感は損なわないが、可能な限り部品点数を減らして強度を維持しているのだと思えば、非常に合理的な設計に思います。
代りにと言っては何ですが、イージーリンクやバックル内の3つ穴による微調整で、フィット感を調整できる機構も提供されていますし、どこまで行っても合理性のある設計ですね。 (どのブレスレットについてたっていい機能なので、ジュビリーブレスにも付いているのですが)
GMTだけ特殊な立ち位置

ROLEX より
基本的には「プロフェッショナルモデル」には多連ブレスレットが採用されておらず、オイスターブレスが採用されています。
このことからスポーツシーン、アクティブシーンにおいては、オイスターブレスであるべき、実用時計はかくあるべきの姿勢がまだ残されているのかなと。
ただ唯一GMTマスターに関しては一見それらしいように見えて、ジュビリーブレスも提供されています(2025)。 これは旅行などのカジュアルシーンも想定されているためかなと。同じく第二時間帯が表示できるスカイドゥエラーもジュビリーが提供されていますね。
25年の執筆時現在に新規登場したランドドゥエラーにはこれまでにないブレスレットが採用されていますが、 これもまた多連ブレスを採用していて、プロフェッショナルモデルとしてラインアップされていませんでした。
オイスターフレックスがサブマリーナにはない

やや余談から入るんですが、先日小笠原に行ってきたんですよ。 その際に海に入ることを想定して、唯一手元にあるU50を旅の共にしようと考えたんですね。 ところが直前になってエクスプローラーに変更したんです。浸かるくらいで大層潜るつもりもなかったから。
変更した主な理由はベルトで、U50はメタルブレスしか持っていないんですが、エクスプローラーは防水ベルトに変更しているんですよ。
高い防水・耐水性能があるとはいえブレスレットには多様な金属が使われていて、 部品点数も多く、結構入り込みやすい構造じゃないですか、遊びがないと動かないわけですし。 そうなるとそこに入り込んだ海水のダメージって中々気が付かないなって思ったんですよね。 だもので、水に漬けるときはラバーベルトとかが良いなってなってしまいました。
特に海水の時ですね。もちろん終わったら速攻真水で流せばいいって話ではあるんですけども、ブレスだってやわじゃないし、交換もできるものですから。 ただ当時いざの際にためらう理由にはなったわけです。

ROLEX より
じゃあところでロレックスのサブマリーナにはオイスターフレックスが採用されていないな?なんて思うわけです。 元々はヨットマスター用に開発され、なぜかデイトナには転用されているオイスターフレックス。
よく考えてみれば分からんでもないです、激しく揺れるし制御するヨットの上では色んなものに体や時計をぶつけますし、引っかけて危険なこともあるから、 柔らかく、いざの際には切断できるラバー系のオイスターフレックスの採用。
他方でサブマリーナは潜水時にしか想定されていなくて、ヨットほどぶつける要因は多くなく、 むしろ外れては困るからオイスターブレスのみを採用。それなりに合理的。
じゃあデイトナへの採用は一体なんなんでしょうって考えたとき、おそらく車とヨットとが同じような環境でぶつけ易いってところでしょうかね。
デイトナの中でも貴金属モデルにしか採用されていないので「実用考えてんだか考えてないんだか」って感じは否めないんですが、 他にそれらしい理由も思いつかずです。時計は兎も角にまず人体を守りなさいと。
References
検索してザっと見つかる資料にはあんまり類似する話題が見つからず。さりとて面白かったので記録しておきます。