1本目の時計選び方

昨今の事情を考えれば、周りに時計が好きという方は少ないと思います。 時計が欲しいと思っても、多くの人は自分で調べて買うことになるでしょう。 なので、私なりの1つ目の時計の選び方もここにまとめておきます。

0本目を考える

時計を趣味にしようとしていて、今は何も時計を付けてない、というのであれば、まずは比較的安価な時計に手を出すのもいいと思います。 1本目としてではなく0本目的な思考です。

なぜかというと「時計を身に着ける習慣が嫌にならないか」試すのがいいと考えているからです。 あるいは、1本目を選ぶための訓練にもなるからです。後に続いて0本目の話が時折出てきます。

0本目なので、ある程度ラフに考えてもいいと思います。「身に着けたいと思うが、それほど高くないもの」という枠組みで探しましょう。

それほど高くないもの、というのは、本命時計に出してよい予算があって、それに影響が出ない範囲です。 例えば50万円前後の予算で考えてるなら、2~5万円くらいとか。 100万円予算であれば、10万くらいまでとか。概ね10%とかですかね。必ずしもその限りではないです。

0本目のG-SHOCK

ちなみに私の場合はG-SHOCKでした(それなりに高いMTGシリーズだけど、やっぱり10%くらいでした)。 どうせバイク乗るし、機械式着けてバイク乗ったりスポーツする未来も思い描けないし、機械式はラフに扱えないだろうしって、理由です。

G-SHOCKは種類もありますし、あって損しない感があって割とおススメ。 別に好きな物がなければG-SHOCKである必要はないです。

1本目は一番使う時計を

魅力的な時計は山ほどありますが、1本目なら、日常的に一番使う時計を強くお勧めします。

時計そのものが魅力的であっても、超特定のシーンにしか使えないなら、買わなくてよかったかもな、となってしまいます。

どんなに用途を絞り込んでも「土日にはその時計を身に着けて過ごしたい」くらいの時計がいいです。

その時計を使っているうちに、特定のシーンではこういう時計がいいな、というのは必ず見えてきます。その時に2本目を探せば良いです。

1本目を探してる間に0本目を着用していると、0本目でも似たような体験ができると思います。

1本目は特別慎重であるべき

1本目の時計は特別慎重になって良いです。比較対象となる時計がないので、その時計のどのようなところが良いのか、悪いのか、判断がつきにくいためです。

動画や写真やレビューを参考にしたりして、十分その時計について知れると思うじゃないですが、やっぱり自分が使うシーンと他人のそれとは異なるんですよね。

そういう意味でも0本目は重要になってきます。比較対象が出来上がるので、やっぱり0本目はあったほうがいい。

時間をかけた方がいい、候補は変わる

これは私だけかもしれませんが、時間をかけて探すと、途中で自分の趣味が変わることがわかります。 趣味というか、色んな時計を見た結果、最初の頃に候補に選んだ時計とは、別の時計を候補に選んでいることがあります。

最低でも3か月、半年~1年くらいかけて選ぶと、結構な勢いで候補が変わると思います。

※変わらなかったあなたは選球眼が素晴らしいか、自問自答が上手いのかもしれません。

着用するまで決めない、オンラインはなし

1本目に限らず、0本目の時からそうですが、試着するまで決定するのはナシです。 したがってオンラインで選んで購入はナシです。

仮にオンラインでしか手に入らない0本目が気になるなら、0本目の候補になる他の時計でもいいので、 同じサイズ感、同じようなルックス、同じような素材の時計と合わせて必ず試着しましょう。

「1本目がオンラインでしか手に入らないけど、どうしても欲しい」を許容して踏み切れる人は、多分お金持ちです。 したがって、ここで紹介する内容は、あまり参考にならないかもしれません。

経験的に、決定的な時計は、着用時に何かしらの感動や衝撃があります。

複数のブランドを扱う店へ行く

もちろん最初は写真や公式のイメージで絞り込んでいくのがいいです。 ただ必ず複数の時計を扱うお店に見に行った方がいいです。それは中古や二次流通を取り扱うお店でも構いません。

絞り込んだ時計以外に、その場で気になった時計を探して見て、そして着用してみるのです。 着用感、素材感、工作精度の違いなどは、手に取らないと、身に着けないと、絶対に分からないです。

そうしていくつかの本命候補を試着したとき、納得がいく時計を選ぶのがいいです。

注意したい心理状況として、ある程度候補を絞っていくと、その絞り込んだ時計の良さにしか目がいかないことがあります。

「いろんな時計の良さ」「ちょっとでも気になる」「自分ならこの時計をどうやって付ける」とかを考えながら見て回るといいです。

1本目を買って使っていった後だと、一気に視界が広がって、この辺が感覚つかめるんですが、自分は1本目でできていた記憶がないです。

相談と提案を受けられる

コミュニケーションの取り方次第ではありますが、複数のブランドを取り扱うお店では、相談したり、提案を受けらることがあります。

もちろん正規ブティックにしてもそうですが、複数ブランドを取り扱う場合は、ブランドを横断した内容になります。

例えば「こういうデザインが気になる」「こういう時に使いたい」「この時計のこういうところが(悪い方向に)気になる」などの 相談から、であれば「こういったブランドや時計はどうか」という提案が受けられます。

あるいは「AとBで悩んでいる」というときに、ライフスタイルなどに合わせて、どちらの方がおススメか、などの提案が受けられます。

繰り返しになりますが、正規ブティックでも同じような対応は受けられますが、ブランドを横断して、というのが重要です。

一本ずつ試着は意味ない

私がやってしまったのですが、正規ブティックを回って、1本だけ試着を繰り返すのは、あまり着用感の違いを感じることができませんでした。 正規ブティックを回るにしても、必ず複数の時計を試着させてもらいましょう。

初めての試着は緊張する

初めての試着は腰が引けますよね。だって高いものですから。でも必ずやった方がいいです。私も小心者ですから、かなり苦労しました。

初めての時は緊張状態にあるので、試着したからと、必ずそれに決めることを絶対にしないでください(これは私もしてない)。

もし初めてで試着もできなかったら、繰り返し足を運んで、徐々に慣れるのはありだと思います。 私も住む世界が違いすぎると、汗をかきながら、緊張しながらだったのを覚えています。

緊張は視野と思考を狭める

緊張は視野と思考を狭めてしまいます。帰って良く見たら、こういうところが気になった。時計以外で経験ありませんか。 もしなかったとしても起こりえます。要注意です。

同行してもらう

経験者がいるなら

もし周囲に高級時計の経験者がいるなら、同行してもらうのがいいです。

どういうところを見るべきか、なんて情報もくれるし、店員さんとのコミュニケーションも取ってくれるだろうし、損がないです。

そして何よりプレッシャーが軽減されます。

他方で信頼できる人に限ります。過剰にお勧めされたり背中を押してきそうな人は避けた方がいいと思います。

経験者じゃなくても

経験者じゃなくても、理解がある友人などに同行してもらうのは良いと思います。プレッシャーの軽減になります。私はこの口でした。

あと良いのは客観視してもらえます。その時計が似合う似合わない、などの判断って、自分に余裕がないとできないです。

「慣れてない自覚があるときは誰かと一緒に」は、時計選びに限らず、何かを決断するときに有効な手段だと思います。

時計に興味がないけど審美眼がある人とかいいですね。価値相応かどうかなんかも相談に乗ってもらえそうです。

着用した姿のチェック

全身をチェックする

時計店には大体鏡が置いてあります。着用した姿を客観視するためです。

大きな店舗にしか置いてなかったりしますが、姿見、体全体が映る全身鏡があるなら、それを借りるのがいいです。 ただ、ほとんどの場合には顔を映す用の、腕や上半身だけ確認できる鏡だけが用意されています。

そういう時は、スタッフの方に自分のスマホで写真を撮ってもらいましょう。

普段は自分の腕だけ見るので、腕だけ確認できていれば、究極それでもいいとは思います。

ただわざわざ高級な腕時計を選ぶ人って、それを身に着けた理想の自分のイメージみたいなものがあるはずで、 それを確認するために、全身を映すのがいいと思うんですよね。

私はこれをしてもらってよかったと思ったのです。

注意点として、そもそも写真撮影がNGなブランドや店舗もあります。必ず確認しましょう。

着用シーンに近い服装を

ざっくり絞り込み位の段階だったら不要ですが、本命を選考する、決めにかかるときは、 必ずその時計を着用シーンに近い服装をして行きましょう。1本目に限った話ではないですけれども。

一番着用シーンが多いと想定される時計を1本目におススメしたいので、必然、普段着か仕事着になってくるとは思います。

単純接触効果に注意

写真やカタログ

写真やカタログを持ち帰って眺めていると、単純接触効果が生まれます。 繰り返し接していると好印象になる、という心理的現象です。

自分の判断を鈍らせる可能性があることは、あらかじめ知っておいた方がいいと思います。 これがいいと思い込まず、広く探すのが吉です。

他方で、1本目は一番使えるものを、としたのは、この要因も少しあります。 せっかく選ぶからには、後悔がない方がいいし、好きでありたいじゃないですか。

レンタル時計

昨今では高級腕時計のレンタルサービスがありますね。

極端なことを言えば「付き合う前から結婚を決められる人は少ないだろう」から、利用するのも手だと思います。 本当に必要かどうか、欲しいかどうか確認できる機会が得られます。コストはかかりますけど。

ただここでも単純接触効果が生まれる点に注意した方がいいです。 最初の1本目だと特に、他に比較する時計がないので「そういうものか」で、判断を鈍らせる可能性があります。例えば着用感とか。

逆を言えば、着用感をしっかり試せるし、高級腕時計店でも時計の扱いに慣れることができるし、 そういう使い方は考えられます。時計着けてると店員さんも多少は接し方、話す内容が変わってきますからね。知ってる前提、知らない前提。

中古や二次流通と正規の違い

こちら調べれば山のように情報が出てきますが、後に続く話のために改めて。

正規ブティックは支払う金額が高くなるものの、対応の良さとブランド体験が得られます。 こだわりがあるかは兎も角として、その時計のファーストオーナーとして名前が入ることにもなります。

ブランド次第ですが、メンテナンスやイベントのタイミングで、定期的に連絡をいただけるようにもなるようです。 また保証の内容、メンテナンス、アフターサービスの内容も、ブランドによって正規か非正規かで変わることがあります。

他方で中古や二次流通は、価格が安いです。時計そのものに保証が与えられるタイプのブランドは、 正規店での保証が受けられるようです(多くの場合はこのケースにあてはまる)。 ※保証の対象範囲、かかる金額など保証の内容はブランドごとに異なる。

中古の状態は実物で確認

オンラインで掲載されている中古の状態について、経験的に、ほとんど信用しないほうが良いと思います。 実物を確認しに出向いたところ、記載内容と事実が異なるケースに何度も遭遇しています。有名店であったとてです。 例えばベルトの金具に痛みがあったとか。

店舗の運営を考えれば、仕入れの段階では、細かいところまでチェックされない可能性は十分あります。 また評価する人間も一人ではないので、どうあったってバラつきが出るものです。

同じように、その傷を許せる人、許せない人、というのは人それぞれなので、 ダメージがありますと書かれているが全然わからない気にならないもあれば、逆も然りです。

ただ「プロが見たから大丈夫であろう、大手だから大丈夫であろう」の認識が危険であることだけを把握しておくことです。

一度試着してフィーリングは確認できてるし、オンラインで状態がいい安いものを買おう、は危険性を持っています。 ※もちろん良質な判断をしてる、時計がある、ということもあるでしょう。

中古、二次流通ならではの情報

これはやや余談で、真偽の確かめようもなく、やはりコミュニケーションの仕方に依るものなので、話半分にしていただきたい内容です。

中古や二次流通を複数扱う店舗ならではの情報として、一般に正規ブティックでは語られない欠点の情報が得られることがあります。

例えば故障情報です。保証対応や、オーバーホールの請負をされてる店舗ではそういった情報が集まるのは理解できます。 例えば「あのモデルは故障でよく送られてくる」など。

中古なら保証を大事に

私は1本目を(0本目も)正規ブティックで購入しました。個人的には正規を推奨したいですが、正規でなくてもいいとも思っています。

私が正規にした理由は、知識ゼロの状態だったので、正しい情報を仕入れたい、万が一の時の問い合わせ先や保証が欲しい、といったものでした。

他方で中古でもいいと思う理由があって、それは予算の問題です。 私が初めて購入した時は独り身でしたし、ありがたいことに多少無茶ができるシチュエーションのために、予算を付けられましたが、必ずしもそうではないと思います。

ただ中古を狙うにしても、その店の保証が1年はある、提携工房があり修理や不具合の相談ができる、ところで購入することを強く推奨したいです。 時計本体に正規の保証が付属するだとなお良いですね。

予算を忘れて候補を探す

以降の項目は1本目に限らないんですが、私なりの絞り込み方、選び方です。参考までに。

いったん予算のことは忘れて、候補を探すことは個人的にはお勧めしたいです。 もちろん予算の都合で今は手が届かないことはあると思いますけども。

本当に欲しい時計があったとして、それと利用シーンが被らない時計から選ぶとか、 デザインやビジュアルが似たような時計を探すヒントにするとか、色々視界が広がります。

中古なら手が届くかも、とかって情報にも目が行くようになります。

その時計である必要を探す

その時計でないと駄目なことを考えるのをお勧めします。

「同じようなビジュアル、デザインの時計があるけど、それと比べて、この時計のここが良い」みたいな形です。 迷いが消えていきます。

それを積み重ねていって「似たような時計がどちらでもいい」の時は、多分まだ迷いがあります。

性質、利用シーンが異なる時計の場合は、迷いというか、どっちも欲しいんだと思います。

悪いところも探す

いい時計を見つけたと思って絞り込む段階に来たら、その時計の悪いところを考えるのが良いと思います。 悪いところも踏まえて、価格を込みにして納得できるか、は時計に限らず買い物には重要です。

悪いところの見つけ方は、他の時計と比べてもいいし、価格のことでもいいです。 着け心地は間違いなく向こうのほうがいいが、それを許せるくらいに顔が好きとか。

ここでも0本目の時計が活きてきます。

明日、新しいモデルが出ても後悔がないか

明日、来週、その時計の新モデルが出ても後悔がないかどうか、考えてみてはどうでしょうか。

アンティークやヴィンテージだって例外にはなりません。 その心配は少ないですけど、機構が新しくなって復刻する可能性だってあります。

多分、その物(時計)が好きかどうかを突き詰めていくと、それが気にならないです。 逆を言えば、それが気になるなら、自分の視点で、その時計に改善の余地が残されているということです。

絞り込んだ後も他の時計を見る

限界まで絞った後も、まだ他の時計を見るべきです。本命を見に行くついでに、覗き見していきましょう。 まだこういう時計があった、あっちも見ればよかったかもな、という後悔が消しやすいです。

あるいは、やっぱり絞った時計の方が比較していいな、という自分への説得材料を強める形にもなります。