5116Gをついに手に取ってみた

かなり最初の頃から5119Gを見つけて、やがて5116Rに興味が移り、5116Gが良いになって、ようやく傷の目立たない5116Gが出てきたので手を出してみました。 一般的には上がり時計ですが、私にとっては上がり時計にはならなさそうな予感がしています。

最近になってサイズ感に対して強い思想が生まれてきており、ケース径よりもダイアル(文字盤)径の方が重要である、というのがその1つなのですが、 この時計を少し身に着けた感覚で言うと、ダイアル系が私にとっては大きいような気がしています。それが上がりにならなさそうな理由です。

ケース径は36mmですが、ベゼルが細いんですよね。そうするとダイアル径が大きくなる。ダイアル径を大きく感じると、間延びや大きさを感じやすくなるんですよね。 ましてこの文字盤には分を表すレールやインデックスの類がない。

それはドレス要素を持った時計としては正統派のデザインなのかもしれませんが、私にとっては不利に働いているような気もします。

事故った

続けざまに「気もしている、気がしている」というのは長らくこの時計をつけることが出来ていないからで、何が起こったかというと、初期不良を引きました。

2011年販売の個体なんですが、オーバーホール履歴がなく、しかし有名店だし、この価格帯だし、 パテックでございというブランド格だし、検品位きちんとしているかろう、という認識が甘かったですね。油断しました。

というわけで執筆時現在は本国送りになり、手元にないのです。早々に発覚したのが良かったと思うべきだろうか。

付属品類は一式

保証書などの付属品が一通りそろって出てくるのは流石に国内販売、国内流通の個体かなと思います。 裏スケから見えるムーブメントのシリアルと、保証書記載のシリアルとの合致などは店頭で確認しましたが、 これキズミ持ってない人だったらどうしてたんだろうと思うんですよね…。

正直箱の工作精度とか、クリアランスは良くない。遊びが大きく持ち運んでいてカタカタはします。 接着剤の露出もこの通りある。

そういう時代に制作されたものとして評価するなら、そういう物なのかもしれませんが、 要するに名実ともにトップに君臨するであろう非独立系時計ブランドでもこういう物なのだと分かります。

同時期の他のブランドの工作精度も見てみたら、もしかしたら面白いのかもしれません。

まぁ箱より時計本体の工作精度の方がもちろん大事な訳ですが。

類似するデザインについての考察

5115G-001, 5116G-001, 01.0040.680/34, WATCHNIANより

手元にはないんですが、半日持った思考をまとめておく必要はあるかなと思っていて、 冒頭にもあったように、ダイアルデザインについてもう少しまとめておこうかなと。

なお、ここで紹介しないまでも、類似するデザインのダイアルを持った時計は多く存在します。 Seikoのシャリオとか、ロンジンのエレガントコレクションとかetc…。

5115G

左が同じくパテックの5115Gです。エナメルダイアルで構成要素はほとんど似ています。 最後まで悩んだんですが、5116/5119は一度手元でじっくり見てみないと永遠に引きずるだろうなと思って5116にしました。

5115はケース径が35mmなのはもちろんですが、異なる要素としては、ドットインデックスがあること、 ローマンインデックスのアスペクト比が1:1に近いこと、ベゼルのクルドパリの内外に少し余白があること、の3つでしょうか。

これらは総じてケースサイズよりもダイアルをより小さく見せまています。

個人的には細く長いリーフ針には、縦に長いローマンインデックスの方が合うんじゃないかなと思ったし、 線分で構成されるダイアルに対し、ドットが入ることに僅かな違和感を覚えていたんですが、これについては個人の好みの話ですね。

なんなら5116Gを手に取った今ではこちらでも良かったと思います。

5115の良い所は空間周波数がそろって見えるところで、クルドパリ、ドットインデックス、ローマンインデックスがそれぞれ 同じような周期、同じようなサイズ感、同じようなアスペクト比で連続するように整えられているところです。

ケースの比較

ダイアル以外にはケースデザインがはっきりと異なり、流線形のラグかストレートラグか、なによりリューズガードがあるかないかの違いがあるんですが、 これは総じて5116/5119の物の方が好みなんですよねぇ、なぜだか。これは言語化し難いです。

1つはよりクラシカルな物を求めて選んでいるためかもしれません。より古典的なデザインは5116/5119。あとはドレスウォッチにリューズガードが要るかどうかなんですよね。 流線形を表現するため、強調するために一体化して伸びて見えるリューズガードはあっても良いのかもしれないですが、果たして。

ただ先にもチラリと触れていますが、分のインデックスが追加されていることを考えると、完全にドレスウォッチに振り切る思想じゃないんですよ。きっと。 そこまで考えると、ドレス寄り少し遊びの要素を足して、リューズガードがあることに不自然さはないんですよね。そこが5115という選択の面白い所です。

ややドレスから外れるもクリーンな顔は維持したままの5115、ドレス振りきりの5116/5119って感じでしょうか。 ナンバリング的にも5115が先行しているのでより研ぎ澄ましたのが5116ってことにはなるんでしょうけど、5115もそういう見方をすると高い完成度ではあると思います。

完成度と言えば5115Gもエナメルダイアルなんですが、個体差はあれど総じてアイボリーのように黄色みがかっています(なんならちょっと緑入ってそう)。 対して5116Gは明らかに白いです。

純白が作れなかったのか、落ち着いた色合いを持たせるためにあえてそうしていたのかは、こちらもまた果たして、ってところですが、私は白い方が好み。 そういう所も5116に軍配が上がった理由でした。

また5116Gはラグ幅が20mmと、一般的な36mm径前後の時計よりもかなり太いです。ほとんどの場合にはラグ幅は16~18mmですね。

これは男性用のドレスウォッチとしてデザインされたためかなぁと思います。昨今のユニセックスを目的とした時計だったり、 あるいは少し前のボーイズという区分の時計になると16~18mmになるわけですが、結構細く見えるんですよね。まして5115のようにケースがくびれていると余計に。

ゼニスエリート

先の画像(右)のゼニスのエリートは構成要素こそ似ていますが、分のインデックスはバーで、スモセコは左にあり、対称位置の右にデイトが付いています。 ケース径は5116と同じく36mmですが、バーインデックスが追加されている分だけ、少し小径に見えますね。

うっすらと感づいてはいましたが、ミニッツレールや分のインデックスが腕の上に乗る時計の大きさの印象や間延び感に大きく影響を与える、ということはこれで確信を得ました。

エリートに関してはちょっと全体的にダイアルがごちゃついてる印象があって手が伸びなかったんですが、 価格は10分の1だし、スモセコも中々ないので、悪い選択肢とは思わないですね。

アリエクの500円の時計

以前にも別のときに紹介しているんですが、実は37.5mm径の似たような時計をアリエクで500円で買って、クラシックな時計の参考にしていました。 (この頃からずっと5116に対する検討が始まってたと考えると長いな)

写真で見ると大きいんですけど、これ実際に見ると許せるサイズ感だなって思っちゃってるんですよ。対して36mmのハズの5116Gは大きいかなと思ってるんです。 やっぱり理由は分のインデックスの影響だと思うんですよね。

あとはケースの高さの影響もあるのかもしれないです。この写真は上から映していますが、ケースの厚みは11mm近くあって5116のほぼ倍です。

代りにラグが落ち気味な訳ですが、腕の上に乗せた時にすごくベルトが見えるんですよ。このベルトが多く見えるというのが実は重要かもしれなくて、 まだ自分の中で結論出ていないんですが、ベルトが沢山見える=ケースが腕に対して小さいと錯覚させている気がしてならないんですよね。

Stowa Marine

Stowaより

ミニッツレールが合って、36mm径で、しかもステンレス手巻きで使いやすそうな似た構成の時計がStowaのMarine。

この時計グラフィクスで見ると一見安っぽいんですが、動画を見るとすごくカッコよくて、いつか手に取ってしまいそうな1本です。 デイリーユース出来るクリーンな時計としては最高なんじゃなかろうか。

同じく36mm径の5116/5119と役割被りするだろうな、というので見送ってたんですが、5116が返ってきたとき、大きいと改めて感じるようなら可能性ありますね。

難点はリューズがオニオンリューズなこと。普通のリューズの方が好きなのでそこは何とかしたい。 以前(24年)のStowaならカスタマイズで使われていることを知っているとQ&Aに書いてあったんですが、最近はその掲載もなく、純正部品の供給をしてくれるか怪しい。

あとロゴが旧ロゴじゃなくて新ロゴになってしまうんですよねキット。新ロゴが(今のところ)あんまり好きじゃない。リューズとかにある分には良いと思うんですけどね。

5120

折角なので5120についても改めて書いておこうかなと。こちら35mm径でリューズガードなし。ムーブメントの審美性はカラトラバの中で一番好きってこともあって、凄くいいんです。

ただダイアルデザインがあまりにもシンプル。5115がクラシックドレスを維持しつつ流線形を取り込んで遊んでいるのに対し、5116/9はそれを先鋭化、5120はそこからさらにそぎ落とした、といった感じでしょうか。

5120ほどそぎ落とすなら、クルドパリも落としてよかった気がするんですよね。クルドパリの華やかさに対し、 最小限のインデックスのみがあるダイアルデザインに、直線的で飾らない針、秒針もなしとなると、個人的にはややチグハグさを感じます。

他方で実用だけで見るとクルドパリはベゼルの傷を目立たせない効果がありますから、本当に必要最低限の物だけを残したもの、としてみれば、5120はそれはそれでよいデザインなのかもしれないですけどね。 とは言え先のような印象が私はぬぐえず。それこそミニッツレールがあれば別だったのかもしれません。

ダイアルもラッカーしかないみたいなんですよね。

しかし改めてみると35mm径がやっぱりいいになってしまうなぁといった印象もまた同時にある。5116が返ってきたときの印象が楽しみです。