水出し用カラフェ・ピッチャーのデザイン論

これ以上ないくらいにニッチな分類ですが、カラフェやピッチャーのプロダクトデザインについて思う所があったのでまとめておきます。 結論一番好きな製品がなくなってしまっていて残念なのですけれどもね。

HARIO CBC-10SV

ハリオのこのモデルが一番好きなカラフェでした。外装から先ずシンプルに高級感があります。

後継モデルを購入して分かった話ですが、取っ手が全体のやや中心に向かってオフセットされていることで、注ぐときに安定します。 要するに、上の方にあると、かなり重さを感じるんですよ。

ただこれがガラスが一体成型のために歩留まり悪かったんでしょうね。現在では廃版になってしまいました。すごく残念。

またこのモデルの良いところは手を入れて洗えることです。モデルによっては手首が入らず専用のスポンジを用意する必要などがあって、 茶渋やコーヒーの微粉が残りやすい用途から考えると非常に不便です。

部品点数が少ない所も良いところです。外側にパッキンが見えてしまっている点は外観の美しさを損なっているとみなす人もいるでしょうけれども、 代りにネジ式に取り外す必要もなく、構造がシンプルです。

構造がシンプルで部品点数が少ない、というのは量産には大変都合がよく、また実際に使用してメンテする側からしても洗いやすかったり壊れにくいといった利点があります。

欠点としてはストレーナー・フィルター部分。金属メッシュがために、結構コーヒーの微粉がすり抜けがち。大き目に挽いてもどうしても微粉は出ますからね。 底の方にたまった微粉を舞い上がらせないように気を使う必要があります。

また底の部分が劣化してしまいましたね。8年以上使ってきたのでまぁ十分すぎるくらいなんですが。 側面と同じように破損しにくい構造にしてほしかったですが、まぁこの辺はコストの都合とかもあるかな。

KINTO LUCE コールドブリューカラフェ

次に購入したのが KINTO の LUCE ですが、これがこの記事を書くきっかけになった商品です。結論使い勝手がイマイチ。

ビジュアルはシンプルで大変美しいです。ところが使うときに鳴るといくつか困ったことになります。

まず先にも述べていますが、手が入らない。上部が細っているために、成人男性は手を入れるのが難しいでしょう。 日本の成人男性の平均よりかなり細い私でギリギリ入らないです(入るけど出せなくなりそう)。

そうなると専用のスポンジを用意する羽目になります。これが大変めんどい。

ストレーナーは蓋つきタイプですが、あんまり利点は無いかなと思います。ストレーナーを刺したまま注ぐこともないですし。 コーヒーだろうが茶だろうがフルーツ類だろうが、入れっぱなしだと雑味が出てきますからね。

ストレーナーは全体に渡りメッシュフィルターが張られています。目が細かいフィルターのため、微粉が出てこない、喉越しにまったく影響が出ないのは良いところです。

他方で厄介なのは、メッシュが露出してる部分が小さくて、ストレーナーの引き出し時に中にある水が外に出てきにくいこと。 また洗いにくくもあり、きちんと洗えていないとことさらに水が出てきにくくなります。

注ぎ口についてもやや不満が。デザイン上はカッコいいですが、まずねじ切り式です。これによってパッキンが奥に隠れ、外観がすっきりするメリットはあります。

代りに部品点数も加工回数も多くなりますし、使う側からすると複雑に入り組んだ形状がやや洗いにくい。

ただクビレがあるのはいいと思いました。これのおかげで持ち心地というか注ぎ心地が維持されています。指がかかる感覚とも言いますか。

他方でまだまだ欠点も。まず注ぎ口が広く取られているので、力加減をあやまるとガバっと広がって出てしまいます。

そしてこのステンレスのねじ込み式の注ぎ口は、着脱時に手のひらに圧を感じさせます。もちろん切れるようなモノではないですが、不快な痛さというか硬さです。

製品性質上、こぼれないようにしっかり閉めようとするわけですが、力を加えてこのステンレスの淵に手を当てると、まぁそれはそれは嫌な感触。

総じて見た目重視かなと。もちろんそういった選択肢があっても良いのです。

HARIO MCPN-14-B

そうして私はHARIOに帰ってきたわけですが、先のモデルは廃版済み。後継はプラスチックに覆われてしまっていました。ラグジュアリー感は正直ないですね。残念。

瓶部分のメンテについてですが、手首はまぁ私の場合には入るかなといった感じで、もしかして日本人平均より太い男性は入らないかも。

部品点数は増えてしまっていますが、金属部品からプラスチック部品への変更に伴い、歩留まりに関しては改善してそう。 輸送時の破損なども一気に少なくなりそうですしね、事実価格も3分の1くらいになりました。

残念なことの1つ目ですが、取っ手が限りなく上部についてしまって、注ぐときには嫌な位置に重さを感じます。

他方で蓋は取り外したり開けたりする必要がないので、旧製品で片手で蓋を開けられなかった人には、こっちの方が都合が良いかも。

ストレーナーは金属メッシュから一般的なフィルターライクな物に変更されました。これによって微粉はきっちりフィルターされるようになっています。 これは進化といってよいでしょう。

KINTOのものと異なり大部分がメッシュとして露出しているので、排水性がよく、清掃も楽です。

代りに耐久性に不安が出てきますが、粗雑に扱わない限りは問題ないでしょうし、交換部品も販売されています。

ただ執筆時点で交換部品の正規価格が880円、本体価格が2200円ですから、やや割高感は否めないですかね。 トータルパッケージで安価なので、部品だけだと高くなってしまうのは致し方なしか。この辺がプロダクトの設計・製造の難しい所ですね。

さらに、清掃メンテ性能については底が外れるようになっています。

ストレーナーの底には微粉の類が溜まりやすいので、メッシュじゃない部分があった方が良いですし、 清掃時に乾燥もしやすくなりますね。

部品点数が増え、製造や組み立ての都合で、その分が価格に転嫁されているのであれば、正味必要がなかったような気もしますが、 分解して製造した方が整形しやすいみたいなところもあるので、この辺は詳細が推定できずです。

ただ機能だけ見たらよいような気はします。この機能ありで100~200円プラスくらいならあった方が良いですね。

結論

  • 手を入れて清掃できる
  • 重心が中心に寄せられている
  • 非金属メッシュ式フィルターである
  • 部品点数が少なく注ぎ口は金属である

みたいなものがあれば理想と分かったんですが、残念ながら存在せず。最後に紹介したMCPN-14-Bが今のところ最適解ですかね。 ラグジュアリー感はありませんが、パッキンもないですし、清掃もしやすい、良いプロダクトに思います。

コストが安い、水垢が目立ちにくい、錆びを気にしないetc、方々にメリットもありますから、単に欠点ではないです。