化石の過剰な修復や偽物

別記事でケイチョウサウルスについて思うところをまとめたんですが、 ケイチョウサウルスに限らず、ebayを検索すると、中国から配送される偽の化石が複数ヒットすることがあります。 こららについては偽であると言い切ってしまいますが、万が一にでも偽じゃなかったらごめんなさい。

子供の描いた絵のような極めて適当な偽化石は素人目にもわかるとしても、ある程度のクオリティが伴ってくると、騙される率は上がってきます。 これらの化石は単一の出品者ではなく、複数の出品者からそれぞれ出品され、またそれらのアカウントには出品者評価が付いています。

まぁ正直わざわざ化石を買おうなんて人が騙されるようなクオリティではないですが、 それでもポンと土産物屋で1つだけ渡されたら騙される観光客の類はいるでしょう。

注目するべき点として、おそらくですが本物の化石が含まれる母岩に彫刻・プリントされています。 魚と亀なら分かりますが、魚と葉とでどうやってそうなったことを説明するというのか。

しかしまぁコストの低い母岩にプリントし、少しでもクオリティを上げようとするあたりから 積極的にだましにかかる姿勢が見て取れます。将来的にはさらに高度になっても不思議ではありません。

偽化石の生成法についての覚書

偽化石や過剰な補修などの情報があまりにも分散してるので覚書しておきます。

  • 別の動物の骨を使って埋める
  • シンプルに樹脂を使って盛る
  • 塗装・ペインティングする
  • 彫刻する
  • 部分的に他の個体の化石を持ってきて継ぎ接ぎする

概ねこんなところでしょうか、樹脂の場合はブラックライトで見分けるなどすることが多々あるようですが、 彫刻されてる場合や塗装されている場合は分かんないですよね。保護の観点で全コーティングされることもありますし。

お金持ちになれるようなら非接触型の成分分析機やMRIやスキャンの類の機器で、高価だけど怪しいかもって化石の解析とかやってみたいですね。 太いパトロン求む。

ただ前提の話にはなりますが、必ずしも修復が悪いわけではなくて、修復を明示しないのが良くないと考えています。 どの程度、どの部分に修復が施されているか、明示されていれば、問題になるケースはほとんどないように思います。 また保存、保管などの観点からも、修復やコーティングをするべきである、といったシチュエーションは多くあるはずです。

CTスキャンによる化石の真贋判定

日本古生物学会「化石」CTスキャンによる長頸竜亜目鰭化石の真偽判定」というものが見つかりました。 2022年の発行です。"多数の薄い骨片の寄せ集めで補われていた"とありますね。業者によって翼竜の分類に混乱をもたらした例がある、というのも興味深いです。

高く売りたいから補修しちゃうし、それを隠すんだけど、それが博物館とか研究施設に所蔵されると、その経緯を知らない人間からすると、誤った方向へ解釈されるということです。 アカデミックにおいては情報を常に終えるような化石だけを取り扱うようにして欲しいものですが、なかなか難しいのかもしれないですね…。

実際のところ、本物と思って売ってるものが、あずかり知らないところで偽物である、というのはよくある話なんだと思います。悪意が無くてもです。

T-REXが部分的に偽物

落札予想価格が最高2500万ドルのTレックス標本、オークション出品取り消し」という話も2022年にありました。 これは部分的に別の個体の骨格を複製し、全身骨格としていたようです。専門の研究者が気が付いたらしいですが、T-REXくらいになると、専門で追いかけている人はいますよね。しかしお見事です。

というより、この価格帯の物であればそれこそ事前に成分分析とかで本物であることを約束する証拠を用意しそうなものですが、やっぱり信用や面子文化の問題でやらなかったんですかね…?

海外フォーラムによる情報収集

The Fossil Forum の「Is It Real? How to Recognize Fossil Fabrications」の区分には沢山の情報が寄せられています。

オークション品や店頭品の写真が投稿され、これは本物であるか?と購入前に議論される内容も多くみられます。 偽物である根拠を示している内容も多く「参考に」なります。特に国内だけでは情報があまり確認できない物についても見つかることがあるのが面白いです。

ただ、確かに参考にするべき情報とそうでないものとはどうしてもあるようです。 根拠らしい根拠を述べているが、事実であることを保証するソース(や経歴)がなかったりします。

あるいは、これは言葉が良くありませんが馴れ合いのようなコメントの投稿も見受けられます。 化石のファンが集まるのでしょうから、気持ちは分かります。あるいは購入済みの場合は「優しさ」的な物が含まれているのかもしれません。

皆が確固たる確証はないわけですからね。まして写真や動画では判断しきれない部分がどうしたって出てきます。 化石でなくたってそう。露骨な場合や確信めいた内容でない限りは断言ができないから、それであればポジティブであれ、というのも心情なのかもしれません。

ただいずれにせよ、国内では入手しにくい情報が掲載されていることもあるのは確かです。

本物だけど異なる種類の化石

ATLAS FOSSILより

ATLAS FOSSILさんのオークションではちょくちょくと補修についての説明や、本物と偽物についての解説があり、勉強させていただいています。

写真だけでは判定しにくい真贋ですが、そもそもにして、本物の化石であっても、それがどの恐竜の物であるか同定するのはかなり難しいですよね。 すべて石になって、さらには劣化してしまっているんですもの。

まして部位だけであったり出土する頻度が低ければさらにです。そういったまだ同定されていない化石を別の人気のある種の化石として出品されていることがあるようです。

デンドライトなどの偽化石が植物の化石としてメルカリなどに出品されているケースも見かけられますね。

メガロドンに見る極端な修復の例

ATLAS FOSSILより

こちらもATLAS FOSSILさんのオークションより。メガロドンの歯が過剰に修復された例です。

この例では樹脂でベースを作るようにして作られていますが、比較的極端な例には思います。 eBayなどではもっとシンプルにエナメルを張り付けて加工、修復している、といった例が掲載されていることがあります。 ※メガロドンの歯に限らず。

修復箇所が明示されない限り、私の場合は見落としてしまいそうです。肉眼で見分け方を教わる機会があれば別でしょうけれども。 そんなシチュエーションに巡り合えることは果たしてあるのだろうか…。

本物とレプリカの同時出品と比較

偽物ってわけじゃないのですが、レプリカと本物とが同時にオンライン販売されているのを偶然見つけたので、思わず記録を取ってました。 本物は400万円以上、レプリカは2万円での落札でした。

レプリカが別に悪い物だとは思わないのです。本物を名乗らない限りはむしろ良い物だと考えています。

しかしそれなりに精巧なレプリカであってもかなりディティール、情報量は落ちますね。キレイですし。やはり微細なところまで作りこむとコストがかかるのでしょう。

レプリカが出てきたことによって本物がより際立つとか面白いですね。

脆い化石がレコメンドにされてたりする

cata wikiより

catawiki は e-bay よりは有象無象の化石が出てこない印象があります。

が、やっぱり悪意というか恣意的な隠匿みたいなものはあって、著しく化石の一部が脆い状態の化石が「レコメンド」されてたりします。 catawikiの特徴的なサービスというかシステムたるレコメンド、その道の専門家が推奨しますよって物品としてこの化石はマークされていました。

が、商品説明にこの化石の脆さについての言及はなく、写真も正面や細部を拡大するものばかりでした。

まぁそれを見抜けないようであれば、化石をオンラインで購入するな、という話ではあるんですが、善意よりは悪意が蔓延るこの世界です、というのは常々頭に置いておかねばなりません。

彫刻されたウミユリ

The Fossile Forum に「貴州省の化石に注意せよ」というポストがありました。

まぁケイチョウサウルス然り、ミクソサウルス然り、怪しい化石がたくさん出てくるわけです。もちろん真っ当な化石も相応にあるんでしょうが、 ビジネスとして成立し始めると、化石の世界に限らず偽物は横行してきますね。

彫刻されたウミユリの化石や、意図的に白く塗装、変色させられた化石があるとのポストでした。あとは継ぎですね。

彫刻は結構なコストがかかるので、採算取ろうと思うと、効率よく作れてそれらしい結果が得られるか、あるいはそれなりの需要があるかが、必要だと思います。 ウミユリの場合は前者っぽいですね。

茎(と呼んでよいかどうかは兎も角として:棘皮動物だから)部分は、数多く出てくるので継ぎはぎするのは簡単だと思います。問題は花の部分でしょう。 想像していた偽物よりも細部は作られている気がしますが、もし自分が作るなら「型押し」のようにして、模様をつけていきます。

もはや「貴州省の化石は絶対避ける」だけでも、ある程度の安全が確保できるまでありそうですね。

やや余談。The Fossile Forum ですが、日本のオークションに出品されている化石について、国外の方が「本物ですか?」と投稿されているのが面白いです。 今は入札代行サービスとかもありますし、好きな人は世界中見てるもんなんですね。