バイク用工具セットを素人なりに選ぶ

最初に選んだ工具セット

搭載したいパーツ類があったり、バイクは車以上にトラブルのリスクが大きいので、最低限のメンテナンスを自分で覚える程度のことはしようと思いました。 ここではバイク弄りに必要な工具を素人なりに選んでみようと思います。

「工具はセットで購入しろ」は正しい

世間で言われる「工具をあまり持っていない場合、工具はセットで購入しろ(必要な物を後から買い足せ)」という情報は正しいと思います。 バイクに使われているボルトなどのサイズ規格はある程度限定的なものと思いますが、そうであっても、素人の自分でさえ数種類は使い分けました。

また持ち運びするときや、作業中に工具のサイズを入れ替えるときなどに、セットになっていると非常にスムーズです。 どの規格の工具がが必要になるのか、作業を進めるうちに慣れて分かるようになります。最初からバラバラの製品を集めていたらこうはいかなかったでしょう。

自分の選択は「持ち運べる安い工具セット」

結論から入ると、私の場合は「持ち運びが容易な安い工具セットを選択し、後から必要な工具を追加する」なりすることにしました。

私は執筆時現在で東京都内に住んでいますが、バイクを駐輪するスペースがなく、自宅から離れた位置に別途駐輪場を借りています。 また自宅周辺の道路に整備ができる十分な環境はありません。

そういう訳で整備時には工具を持ち運ぶ必要があるのですが、重くて立派な工具セットを持ち運ぶことは大変な労力で現実的ではないのです。 マンション住まいの方も似たような問題を抱えるでしょう。

ガレージや自宅周辺に整備できる環境があれば、初期投資と思ってある程度のグレードの工具セットを購入していたと思います。

しかしある程度のグレードになると、工具箱セットで 15Kg オーバーになってきます。 重さがピンとこない方は、2L ペットボトル 6 本入りの段ボールが 12Kg とか、お子さんの体重とか、そういうものと比較してみると良いと思います。

必要な物だけを抜き出す、という考え方もありますが、どれが必要になるかを上手に判断できない素人にはそれは非効率です。 工具が一覧されてサイズごとに並んでいることによって、必要なサイズ、工具が分かるようになり、作業がスムーズに進むので、 自分のバイクに、今から行う作業に何が必要なのか、判断できないうちにバラして持ち歩くのは悪手だと思います。

購入した製品と検討した製品

KTC のセット

検討した製品の 1 つ目が KTC です。工具に少しでも知識があるなり、情報を調べるなりすれば必ず目にする日本のメーカーです。 KTC 製品はホームセンターなどにも並んでいます。精度と耐久性が良いという評判です。

セット用品に見るからに必要な物が揃っています。ただし重量が 19kg で価格もそれなりにします。 とは言え仕事に使うでもない限りは劣化もそれほど急激ではありませんし、実質的に一生ものに近いでしょう。 ガレージや整備環境なんかがある方にはオススメできると思います。

SK11 のセット

直前まで購入を検討した製品です。SK11 は日本のメーカー(藤原産業)から出ているブランドですが、台湾やその他で製造されている工具をブランドで管理しているようです。 同じメーカーからさらに格安の E-Value なるブランドが出ています。また SK11 もホームセンターで見かけました。

SK11 のセットの良い点は KTC と同じくおよそ必要になる工具がすべてセットになっていること、 価格が高級ブランドよりも安いがある程度品質担保されていることなどです。KTC と比較して首が曲がるレンチが入ってるのも良いですね。

ただし重量が 20Kg あります。ガレージがない人は持ち運びが苦しいです。 マンション住まいの方も玄関が広くない限りはこのサイズと重量を置いておくのが苦しいような気がします(荷台に乗せるとかしないと)。

車であれば車載とも考えられますが、仕事かあるいはジムカーナやレース系などで頻繁に使うでもない限り、 20Kg の鉄の塊を常に車に乗せておく方がいるかどうかは怪しいものです。

E-Value の格安セット

実際に購入した製品はこれです。見た目はチープですし価格帯を考えればネジを舐めたりしないか心配になるレベルの安さですが、 先の SK11 と同じ日本のメーカー(藤原産業)が管理しているものですから、最低限の品質は担保されていると信じました(それでも有識者の方からは怒られるかもしれませんが)。

実際に部品の取り付け取り外しの類をこの工具セットで行いましたが、今のところトラブルは起きていません。 重要な部分をオーバーホールするとか、タイヤを弄るとか、そういった重大な作業をする場合には向かないでしょうが、 素人が触れる部分に関しては使えそうです。

何よりもこのセットを選択した理由は持ち運びが容易であることで、重量が 2.4Kg しかありません。 SK11 のセットの 1/10 です。 都内の小さい部屋に転がしておいても邪魔にならないサイズと重さですね。

レビューを見る限りそれなりに先駆者がこれを使って整備していましたし、 もし自分で整備をすることが難しく、諦めるにしても値段が安いのでダメージが小さい、と思ったのも決め手の 1 つでした。 またグレードの高いものに買い替えようとなったときには車載工具にしてしまえば良いですし、軽いですから誰かに譲るのも容易です。

問題はセットに含まれる工具が少し不十分な性能である点です(後述します)。 そして工具としても外見としてもチープさを確かに感じます。舐めそうと思ったりしたら即座に作業を中止しないとな、と思う程度には気を使います。 特にドライバーにその傾向があります(立派なドライバーがあればそちらを使った方が良い、幸い自分は持っていました)。

検討したがやめたセット

Kijima や同じく E-Value から出ている中堅のセットは購入を見送りました。総じて中途半端だからです。 払う価格の割には欲しい(必要になりそうな)工具類が見当たらないですし、重量もそこそこあって場所を取ります。

デイトナからも似たような製品が過去に出ていたようですが、 現在のところインチのセット、いわゆるハーレーなどのためのセットしか出ていませんでした。

足りない工具

購入した E-Value の安いセットに含まれておらず、必要な工具はチラホラありました。特に安いセットの場合には足りないものが出てくると思います。

その都度の購入で良いと思いますが、柄が長く片側がボールになっている六角レンチだけは最初からそろえても良いのではと思います。

柄の長い六角レンチ

個人的に特に重要なのは、柄の長い六角レンチです。安いセットには柄の短い六角レンチがセットになっていることが多いですが、 経験的に、精度の良い長いレンチでないと、力が上手く伝わらず回らないし、(バイク以外での過去の)経験的に六角を舐てしまいます。短いものと長いものとでは雲泥の差があります。

これらについては一度購入したら恐らく買い換えないでしょうから、私の場合は Wera の少し高いものを選択しました。 柄の短いものにレンチなりスパナなりエクステンションを噛ませて延長する方法はありますが、少し力のかけ方を間違えば舐めます。

あと絵が長いことで狭い隙間にも入っていくことができますし、先端がボール状のものであれば少々斜めについている部分でも回せます。大変便利です。

トルクレンチ

どれだけの力でボルト類を締めるべきなのかは、車体の各部品によって異なります。特に重要な部品については取扱説明書なり、車体のマニュアル明記されています。

どれだけの力をかけて締めるかを設定できるレンチがトルクレンチです。 ソケットレンチ・ラチェットハンドルとよく似ていますが異なります。

必要になり次第の購入で良いと思います。執筆時時点でまだ購入していないので、ここでは解説だけにとどめます。

ビットソケット

必要ならですが、ソケットレンチ・ラチェットハンドルにはめられる六角などのソケットを購入する必要もあります。 高価なセットには含まれていますが、安いセットの製品には多くが含まれていません。

私の場合は 6mm の六角ソケットをホームセンターで追加購入しました。まとまったセットのものを購入しても良かったのですが、 少々値段が高く、1 つを除いて現時点では必要性は低かったので単品購入です。

ソケットレンチのソケット関連製品は、同じ規格サイズのであれば別メーカーの物でも取り付けることができます。 例えば 9.5sq に対応するソケットレンチは、9.5sq に対応するあらゆるソケットに対応します(余程特殊なものでない限り)。

その他

電気配線系を弄るなら電工ペンチや絶縁用のテープ類、重要なネジを締めるときはネジ止め剤が必要です。 長くなるのと、工具セットの話と少しそれるのでここでは割愛します。

なぜ自分で弄れた方が良いか

最後に、バイクをなぜ自分で弄れた方が良いかについて考え方をまとめておきます。

まず当然のことですが、何かパーツ類を取り付けたいときに、取り付け費用をおさせることができます。 また自分で作業できれば、時間の融通も利きますし、取り付け、取り外し時の微調整も可能です。

次にトラブル時の対応がある程度は可能になることです。 簡単なことで言えば、ウインカー、テール、フロントのランプが切れたとか、そういった小さいことから対応が可能です。 バイクが立ちごけを避けられない以上、灯火類、ブレーキレバー類の調整は自分で出来たほうが良いと思いました。

車と色々比較して考えてみても、やはりバイクの方が自力での整備を求められます。 まず先のとおり立ちごけなど車では起こり得ない、バイクでは容易に起こりえる欠損を伴うトラブルがあること。 次に露出している部分が車と比較して多く、日常的な雨風の影響を避けられないこと。

車と比較して操作に余裕は生まれにくいですから、 個人の操作感にフィットするように調整する必要もありますし、車のように容易にシートは上下前後しません。 トラブル時に対応してくれる車の店舗は多くあれど、バイクの店舗はそう多くありません。

最後に趣味性です。バイクはほとんどの場合に実用性より趣味性が高い乗り物だと思います。 立地やかかる費用的な都合でバイクを選択する必要があるなら、カブやスクーターの類が効率が良いことがほとんどでしょう。 そうでなくバイクを選択する理由のほとんどは趣味性で、趣味のためにバイクに乗るのであれば、 自分ように調整したり、ミラーなりランプを変えるなりしたくなるものです。 そのために工具を揃えて弄り、その作業を楽しむことは大いにあると思います。