EARIN M-2を長く使った記録
現在はSONYのWF-1000XM4に乗り換えてしまっていて、そしてそれに十二分に満足しているのだけれど、 それより以前に使っていた「EARIN M-2」について記録しておきたい。製品として不十分なところがあれど、よいデザインだったので。
ルックス、サイズ感、重さはすべてが心地よかった。シンプルで程よいメタルの重さや肌触りが良い。 物やそのデザインには適切な重さがあると思うタイプの人間だが、本当にその辺のバランスが良いデザインだった。 引き出し時のスライドの感触、収納時のハマる感覚も大変良かった。
イヤホンを左右同形状にし、姿勢検知によって左右のどちらと気にすることなく使えるようにする、 とういデザインコンセプトは、使い勝手の良さに影響があったように思う。 少なくとも今使っている「1000XM4」のように、不意の拍子に収納するとき左右どちらだっけとなることはない。
他方で、左右どちらだっけ?が困るシーンは実はほとんどなかったことにも気が付く。 何故ならワイヤレスイヤホンを両方同時に外すという行為をほとんどしていないからだ。 左を外して左に収め、右を外して右に収める、という当たり前のような動作フローを取る。着けるときも同様だ。
これはもしかすると「行き過ぎたデザイン(設計)」だったのかもしれない。個人的にはすごく好きだったが。
あるいは、もっとラフに扱う人たちにとっては良かったのかもしれない。パッとつけてパッと外す、雑に収納するという需要を満たしたい人向けだったのかもしれない。
他に利点があるとすれば、左右どちらでも使える=紛失や故障時の補填についても左右どちらと気にする必要がない点だ。 これについては量産的なアドバンテージがかなり大きいだろう。生産ラインも統一できるしロスが少ない。
左右差がない特徴以外の点で言うと、小型であることは良かった。私は耳の突起が小さく、 一般的な小型イヤホンでは脱落することがあるが、非常に小さく収まりが良かった。よくこの小さい端末の中にすべてを詰め込んだと思う。 ノイズキャンセリングまで載せきった技術者とデザイナーには執念を感じる。
円柱状のプロダクトデザインにありがちだが、本体が転がってしまう問題はもちろんあっただろう。 ただ、ポケットに入れて持ち運ぶなどの利用シーンを考えると、大して問題にならず、気にしたことはなかった。 触り心地や収納機能の作りを優先すると、こうなるかな、といった感じ。
デザイン面を褒める他方でソフトウェア面が付いてこれてなかった。皮肉なことにハードウェアやデザインによって足を引っ張られていたのだと思う。
まず片側だけが接続されてしまうケースが多くあった。もう片側が遅延して接続することもあれば、接続されないこともあって、 接続されない場合、一度両方のイヤホンをケースにしまって再接続をせざるを得なかったのだ。これが大変煩わしかった。 そして、おそらくだがこの問題は左右を識別する機能などに引きずられて起きていたように思う。 ファームウェアのアップデートなどを含めても改善することはなかった。
他に自動接続機能面も弱かった。親機と子機の相性面の問題は勿論あるだろう。 しかし様々な端末で長い期間試していて、スムーズな体験であったことは終ぞなかったように思う。
末にネガティブな要素を書いて終わると後味が悪いように思うが、この製品のデザインには見習うべきところが多くあったなと思い、敬意を表して記録を残そうと、そう思った。