ROLEX EXPLORER 36 1274270のレビュー
長いこと探し回ってようやっと手に入りましたエクスプローラー36mm。 探検家の名に恥じぬ使い方をということで、傷も気にせず出張にゴリっとつけていきました。
最初の1本のデイトジャストに追加する形でロレックス2本目になりましたが、この2本でロレックスの何が良いのか、が良く分かる気がします。 デイトジャストでは機械の良さ、エクスプローラーでは工作精度や造りの良さが分かります。
良く語られるのはステンレススチールのグレードについてです。304、316、904と大きく三種類があります(さらに微小な区分があるが割愛)。 数字が大きくなるほど腐食に強く、硬くなります。
一般的な時計には304、高級時計には316、特にこだわられる時計には904が使われていて、ロレックスの現行モデルは904です。
硬くなればなるほど、それを削るためのコストが多く必要になります。やすりで削るときを想像すればわかりますが、 より硬いものを使わなければ削れないし、削る側も摩耗していきます。
またハサミで物を切るときも同様に想像して欲しいのですが、硬い素材ほど細かい造形を作るのが難しくなりますね。 硬い分だけ微細な構造を作る難易度も上がります。
ロレックスの時計については、硬くあってかつ、工具なしにサイズを調整できるイージーリンク機構などを作り上げたり、 見事なヘアライン(サテン)仕上げを作っています。
工作精度についても非常に高いと思います。こんなバカげたことをするのは私だけかもしれないですし、 購入直後の着用状態で腕を振ると、キュキュッと音が鳴ります。
ブレスレットのコマが極めてフラットに加工され、かつ極めてタイトに組み合わせられていないと、こうはなりません。
一流の大工が木材の表面をカンナで研ぎ、それを2枚張り合わせるとなかなかズレていかない、みたいな話に近しい感覚です。 現代ロレックスの工作精度は一流だと思います。
ここで現代ロレックスと書いたのには訳があって、短い時間ながらも多数の時計をガバっと一気に見てきた手前、 ひと昔前のロレックスも大量に見てきましたが、工作精度も造りも良いと思える物ではありませんでした。
それは当時にしては良かったのかもしれませんが、現代の価値基準での工作精度を評価するには到底至りません。 アンティークロレックスはファンが価格をつけているのであって、価格相応の造りかどうかには個人的には否定的です。
逆を言えば今より価格ももう少し庶民的だったであろうことから、より実用時計として身近にあって妥当な品質だったのだと考えています。 この話は自分でも検証しきれていないし、本題から外れるのでここで割愛。
ちなみにキュキュッと鳴っていた音は一時帰国の頃にはならなくなってました。それはそう。遊びがない造りはそれはそれで大問題。 当然のように見た目に変化はありませんが、程よくこなれたということで。
鏡面加工についての評価ですが、先日手に取ったGS(グランドセイコー)と比較して、見劣りしません。 GSはおそらく304または316ステンレスだと思いますが、一般に904ステンレスの方が磨けば光沢が出るようです。
低価格帯でロレックスと同程度の鏡面加工をしてくるグランドセイコーを褒めるべきか、 ブランドの中ではエントリーレーベルのモデルでグランドセイコーと同等の鏡面加工をしてくるロレックスを褒めるべきかは悩みどころです。 いずれにせよ鏡面加工の精度も良いとだけ。
ただグランドセイコーは「エバーブリリアントスチール」という特殊な素材を採用したモデルがあり、それはもう大層輝いてますね。 エバーブリリアントスチールは904ステンレスに近しい物なんじゃないかと思うんですが、904をグランドセイコーの技術で磨いた結果がコレか、みたいな感覚になります。 それには叶わないです。
硬度の面での評価ですが、ロレックス(というか904)がやっぱり硬い気がします。 GSは数えるほど、安全に使える日常シーンで使っていてもどうしても接触面のスレがすぐ発生します。 多くの時計コミュニティで語られていますが、GSの1つの弱点な気がしますね。
比較して何度も着脱しては空港の身体チェックで揉まれ、機材の搬入搬出からすべての移動時で着用していた状態のエクスプローラーは同程度の傷も付いてないです。
いずれの写真も光を当て先鋭化の画像処理を施して分かりやすくしている状態ですが、GSとエクスプローラーが同等レベルの傷ないしエクスプローラーのが軽微です。 使用シーンを考えればどう考えてもエクスプローラーに軍配が上がります。
ちなみに一番長く着用しているデイトジャストでこんな感じ。日常シーンでしか使わないので擦れの程度です。 衣類やらボタンやら鞄やらで擦れますね。GSと同じような使用感かつ長時間の着用でこれ。
デザイン面については、無反射コーティングの隙間を上手く縫ってるのが見事だと思いました、狙ってるのか狙ってないのか分からないですが。
サファイアクリスタルガラスが採用されている時計の多くは、無反射コーティングが施されています。 それより以前に採用されたプラスチックやミネラルガラスと比べて強固かつ透過性が上がった代わりに、反射もするからです(屈折率が上がる)。
公式によればロレックスは基本的にはガラスの両面に無反射コーティングを施しているようですが、 そうはいってもどうしても無反射コーティングで対応できない角度というものが存在します。
そんな角度にあるとき、インデックスや針の鏡面が、ガラスの反射よりも目立つように反射して来ます。 つまり完全に文字盤が見えなくなる角度がないんですよね。これもし狙ってやってるなら見事だなと思いました。
やや余談ですが、無反射コーティングについてはCITIZENのクラリティコーティングあたりが一番強いんでしょうかね。
ブレスレットについては、造りを褒めておいてなんですが、ちょっと困っています。 デイトジャストは1か所留めのシングルロック、エクスプローラーは着脱に2工程必要な2か所留めのダブルロックです。
あまり遊ばないように着用するのが好きなので、かなりタイトな長さに調整してあるんですが、 デイトジャストとエクスプローラーを同じような着用感の長さにしたとき、 エクスプローラー(=ダブルロック)はかなり内径が小さくなります。腕に通すときは良いんですが、外すときがちょっと手間です。
なのでもしかしてブレスレットではなくベルトに付け替えようかなと考えている次第。 ブレスレットもかなりソリッドで、ヘアラインが鈍く白銀に輝いてカッコいいんですけどね。
「着けるときは文字盤を手の甲側にして普通に着用、外すときは文字盤を手のひら側にして抜くとスムーズに抜ける」というハックがあるにはあるんですが、考え物ですね。 イージーリンク分だけ伸ばして、すこし緩く着用も良いのかもしれないです。