夜も比較的見えるヘルメットシールド選び

※この記事はずいぶんと昔に下書きしていたものを、ほとんどそのまま公開設定にしています。 公開日時との情報鮮度にギャップがある可能性がある点に注意してください。
見た目の良さのためにクリア以外のシールドが欲しかったのですが、 シールド選びで一番問題なのが「夜間やトンネルなどのときはどうするのか」という点です。
世に公開されている多くの先駆者の資料・記事・レビューを参考にしましたが、納得のいくものが見つかりませんでした。 難儀した理由のほとんどが先駆者の情報が「合理的な理由に基づくものでない、十分に納得できる検証ではない」からです。
執筆時現在、バイクに乗り始めて間もない素人ですが、ここでは私がシールドを選択するまでの思考と試行をまとめています。
結論をまとめると メーカー公表値があれば確認するのが一番良くて、 あとはブルーだからと迷信しない、面倒ならライトスモーク程度かフォトクロミックシールドにするのが良さそう、です。
問題の解決方法
言うまでもありませんが、夜間などにシールドの視認性が悪くなることについて、問題の解決方法はいくつか考えられます。
- シールドを複数持ち運ぶ。
- そもそも夜間は走行しない。
- 夜間やトンネルでもある程度は見やすいものを選ぶ。
1 については、湾曲していたり傷つきやすいなりで運ぶこと自体がコストですし、取り付け取り外しの手間も面倒です。 そもそも夜間は走行しないなら、1 について考慮する必要がありませんが、それでもトンネル内部ではシールドを上げるなどの対応が必要になります(これについてはほぼ不可避)。
それでは夜間もそれなりに見えるものを選ぶしかないじゃないかと 3 の解決方法を模索することになるのですが、 先のとおり、世に出回っているレビューなどの情報は私の納得できるものではなかったわけです。
なおメーカー公式 (たとえば SHOEI) からは、色付きのシールドは夜間走行に利用しないように注意が示されています。色付きシールドの夜間利用は自己責任です。 趣味性の高いバイクにおいて、見た目の好みを考慮することは悪いことではないと思いますが、一方で安全を完全に捨て去って良い理由にはなりませんね。
メーカー公表値を確認する
商品レビューなどで見やすい見にくい、これくらい透ける透けないなどの情報は沢山ありますが、視力も撮影環境もそれぞれバラバラですから、評価基準としては曖昧です。
唯一自分を納得させられた資料は、SHOEI が公開する公式の透過率を示した資料でした。 他のメーカについては調べていませんが、公表されているのであればそれを参照するのが良いと思います。
この資料からいくつかのことが分かります。まずミラーシールドの中にはダークスモークと変わらないレベルで光線透過率が落ちるものがあるということです。 ダークスモークとミラーとどちらが暗いのか、という点を疑問に思う方がいれば、公表されている数値を見れば明らかになります。
青いミラーシールド
レビューなどを調べるうちに「青いミラーシールドは比較的見やすい」という情報がチラホラと見えました。、 ですが「青いミラーだから夜も見やすい」はやっぱり曖昧情報で、製品次第によってはそんなことはない、ということが公表される透過率の値から分かります
例えば Z-7 のシールドについてですが、公式のラインナップは「メロースモークミラー ブルー」があります。 この製品の光線透過率は 22-28% となっていますが、同ラインナップの「スモークミラー ファイヤーオレンジ」の 27-37% の透過率より大きく下回っています。 一方で、J-FORCE, J-Cruise 用の公式のシールドについては青いミラーの方が高い透過率となっていますね。
前提として経験豊富なライダーが多くのシールドを試した上で共感を得ているなら、 それらしい理屈を示せていないだけで何かしらの理由があるのかも、とも思いましたが、
- 多くの一般ライダーが、同じような条件で多くのシールドを試せるとは思えない。
- 多くの共感するライダーが同じような状況で同じ製品を使っているとは思えない。
ということに尽きます。
では青いミラーが見やすいとは何なのか。理屈として考えられたのは次の 3 つです。
- 多くの製品で青いミラー透過率が高くなるように作られている。
- 青色の波長を反射する特性のため他のシールドよりは見やすい条件がある。
- 色合いがもたらす雰囲気。
1 と 3 については調べれば出てくるのでしょうけど、今のところ私には必要がないのでしません。
2 については可能性があるかなと思います。青いシールドが夜間でも "比較的" 見やすいとされるのは、 市街地では赤や黄系の光が多く、また走行車両の主要なランプも多くが赤や黄系だから、かもしれません。
言うまでもなく、赤や黄色のミラーシールドはその波長の成分を弾くので、それに該当しない青が見やすいとされている可能性はあるのかも。 また曖昧情報をこの世に出すことになりますが、こんなところではないかなと考察します。
と、色々悪く見えるように書いていますが、青いミラーシールドがカッコいいのは大いに同意します。
山城のシールド
シールドのメーカーは積極的に透過率などの情報を公開するか、理想を言えば製品説明に掲載した方が良いと思います。 仮に、良く反射しつつ、でも中からは良く見える、という製品が開発されたのであれば、その技術工夫を宣伝に活用すれば良いのではないでしょうか。
例えばレビューやブログなどを見る限り人気のシールドメーカーに「山城」が挙げられますが、光線透過率は提示されていません。 どころかちょっと信用できるのか怪しい情報が出てきます。
「エキストラシールド」なる製品の紹介には次のようにあります。
紫外線を99%カットする特殊な加工は、ミラーシールドにありがちな視界の歪みや内部反射を抑えて、視界をクリアに保ちます。
これは良く分からないことを言っていて、紫外線は不可視光線ですから視界をクリアに保つことには影響がないはずです。
眼精疲労柄の影響を考慮する、というのであれば、私が十分に知識がないものの、まだ理解が及ぶかもと思うのですが、 眼精疲労については別途の謳い文句として記載されているので、そういう意図はないようです。
これについては、同内容で、大手販売の Webike さんの紹介動画にもあります。
どうしてこういう情報の出し方をしてしまうのか、逆に製品の信憑性を欠いてしまう気がしてなりません。
下地を必要としない特殊な被膜加工技術を確立した、ということですが、 これについてはシールドの透過率を向上させることに貢献していそうですから、もしそうなら光線透過率やその違いを数値で示せば、 視界をクリアに保つことを証明するのに都合が良さそうと素人ながらに思います。
透過率ではなく反射率については公式の「視え方」の解説で言及されているのですが、具体的な数値は示されておらず。なんであればここにも疑問が生じて、
ブルーライトをカットするためコントラストが上昇し、遠近感が強調されてくっきり見えます。 動きのあるものも見やすいためスポーツ走行にも適しています。
という良く分からない宣伝文句がブルーのミラーシールドの項目にあります。
確かにブルーを反射すればブルーライトはカットされるのでしょうが、それによってコントラストが上昇する理屈がちょっと良く分からないです。 コントラストを落とした結果ブルーライトが軽減される、なら分かります。もっとも、コントラストを落とす、という機能であらば、ブルーライト以外も軽減しそうなもんですけども。
動きのあるものの見やすさについても、大きな影響をもたらすレベルで、色によって変化があるとは思えないです。 総じて私が不勉強なだけかもしれませんけれども、これらの説明には違和感を覚えます。
実際のところ下地を必要としない加工自体は非常に良い技術なのでしょう。 これも知覚できる程度に影響するのかは疑問ですが、下地がない分ほんのわずかでも屈折を抑えられるでしょうし、技術開発費用を回収出来て以降はコストカットもできるでしょう。 (でも FAQ のページには、なぜかもう一層の黒系の塗装を挟んでいることを売りにしている)
一方でこの加工は強度面には難が出てきているようで、レビューでチラホラと雨天時などに剥がれの影響が出ていることを述べている方たちが多く見受けられます。
悲しきかなネガティブな内容のレビューの方が、具体的で率直な意見が多く見受けられる印象があります。
そういう訳で透過率が比較的高いようである山城のシールドですが、私は採用を見送りました。 色々と酷評していますが「透過率が高く、でもミラーをカッコよく見せたい」という理想的な製品を追求したモノづくりは好きです。ぜひ続けて欲しいと思います。
フォトクロミックシールド

SHOEI 公式のものを引用
サングラスなどで使われているフォトクロミック(素材?)を採用しているシールドがあります。 フォトクロミックは紫外線の照射によって徐々に暗く色が変化する特性を持っていて、日中は暗く、夜間は透明になります。
ミラーのような見た目にこだわらない、スモークが良い、スモークで十分という人には理想的ですね。 最大遮光率は SHOEI の製品は 23~29% で、ダークスモークとほぼ変わらない数値です。
欠点としては、トンネルなどでは急激な変化を期待できない点、高価である点と、その割には徐々に劣化するという点です。
すべてのヘルメットメーカーから対応する製品が出ているわけではありませんが、 どんなヘルメットでも対応できるように、ヘルメットの内側に張るタイプのものもあるようです。
欠点の寿命については気になりますが、2 年程度は持つという評価がチラホラ見えます。 使用環境の影響を多分に受けますが、1 年なら短すぎるけど、2 年ならまぁという評価をしそうではあります。
最終的なシールドの選択
私は現在のところ SHOEI Z-7 を使っています。少なくとも日常使いではシールドを持ち運びたくない、という理由から、 見た目の良さは捨てがたいですが、ミラーシールドは諦めざるを得ません。少なくとも素人のうちはその選択ができないと結論付けました。
そうなると、そこそこの遮蔽率を得られる公式の「スモーク(37-43%)」か「フォトクロミック(23~X%)」が良いかな、となり、 最終的な選択はフォトクロミックシールドになりました(ポイントの類もありましたし)。「メロー(56-62%)」ではわずかに暗くなるだけで中途半端と判断。
おわりに、繰り返しになりますが、基本的には色付きシールドによる夜間走行はメーカー非推奨です。トンネル内ですらメーカーは非推奨にしています。 必要に応じてシールドを上げるか、やはり複数持ち運んで交換するなどで対応しましょう。
またバイク用品店にはシールドのサンプルが置いてあることがあります。 実際に装着して走行できるわけではありませんが、イメージをつかむのには非常に良いと思います(メーカー、製品ごとに透過率が違うのでサンプルとしての正確性には欠けますけども)。
余談:バイザー入りのヘルメット
バイザー(サングラス)が出し入れできるヘルメットがあります、一番最初に手にしたヘルメットが SHOEI の J-Cruise でまさにそれでした。 他に人気の GT-Air などもバイザー入りですね。
非常に合理的と思う一方で、バイザー入りの欠点はその機能の分だけ帽体が大きくなる、重くなることです。
ミラーやスモークシールドを装着することによるヘルメットの見栄えのカスタマイズを除いたとしても、 元々頭が大きめの私にとって、帽体が大きくなるのは望ましくありませんでした。
あとは単純に J-Cruies のようなスポーツジェットのシルエットが自分の好みとは外れているので変えたいという理由から、 フルフェイスなり普通のジェットのシールドを検討するに至っています。
もちろん J-Cruies も良いヘルメットだとは思います。視界が広いし、高速走行もできますし、 汎用タイプとしては機能面だけ見ればすごく良いでしょう。でも外観や保護性能を考えて替えたくなったのです。
A-Force RS 1380±50g など、 フルフェイスかつ十分に軽量なヘルメットも登場してきています。バイザー入りのフルフェイスで 1400g 切るのは珍しいかもしれません。 一方でやっぱりバイザーがなければその分更に構造はシンプルになり軽量になったはずでしょう。